回転ずし業界も、様々な金額設定であの手この手で、どんどん新しい事を取り入れて成長してきた業界です。
今回は特に、100円ずしに絞ってビジネスモデルを調べてみました。
目次
回転ずしの発祥
回転ずしの発祥は1958年で、東大阪市の近鉄布施駅北口にあった「元禄寿司」です。
この「元禄寿司」の白石義明という職人が向上のベルトコンベアを見て発案しました。
白石義明さんは、東大阪は工場が多くあり、そこで働く地元民に安く寿司を提供していましたが、より効率的に振舞える方法はないかと模索し、回転ずしという方法に行きついたのです。
その後、日本での万国博覧会で紹介・表彰され、一気に人気に火が付きました。更に、1978年以降は、新規参入が解禁され全国へ広がり、今の大型チェーン参入や競争の激化に繋がっています。
主な回転ずしチェーン
回転ずしだけで言うとかなりの数があり、まだ地域限定の店舗も多数あります。
ですので、業界最大手の100円寿司チェーンの特徴を少し紹介します。
スシロー
業界トップに君臨するのが株式会社あきんどスシローの「スシロー」。
元々は、地域によって「あきんど」「すし太郎」「スシロー」と店舗によって名前が違ったのですが、全て同じ株式会社あきんどスシローの店舗です。
現在は、全て「スシロー」になっていると思います。
本社は大阪で創業1984年。現在は国内476店舗運営しています。
2017年の売上高は1551億円。
くら寿司
業界2位は「くら寿司」。なんと、社長は「スシロー」出身という事で、ノウハウを「くら寿司」に活かしていると思われます。
くら寿司の特徴は、添加物を使わないという拘りがある点。店舗名も「無添くら寿司」となっています。お子様にも、安心ですね。
その他、お皿回収システムや、回転皿の蓋「鮮度くん」、お皿5枚ごとの自動抽選機「びっくらポン」など、子供に喜ばれるものを導入しています。
くら寿司もスシロー同様に、大阪の企業で創業1977年。
店舗は、アメリカ・台湾を含め429店舗運営しています。
2017年の売上高は1227億円。
はま寿司
はま寿司は株式会社ゼンショーホールディングスの100%出資の会社で、まだ非上場。
しかしながら、今一番勢いがある回転ずしチェーンではないでしょうか。
はま寿司は、平日には1皿90円で提供していたり、季節ものにも強くアラカルト・デザートメニューも豊富で子供にも人気です。
株式会社ゼンショーホールディングスといえば、「すき家」「なか卯」「ココス」「ビッグボーイ」「ジョリーパスタ」を手掛ける会社でもあります。
ですので資本力がある分、見通しがつけば店舗も量産できますし、これだけの外食チェーンを抱えている事から、仕入れにも強みがあるでしょう。肉類にも強みがあります。
そうした、ゼンショーグループの強みを生かし全国展開を行い、外食産業のノウハウだけでなく、IT等の最新のテクノロジー導入のシステム投資も行っています。
かっぱ寿司
かっぱ寿司は、コロワイドグループ傘下でカッパ・クリエイト株式会社が運営しています。
かっぱ寿司は、少し前までは業界最大手だったのですが、ここ数年はスシローやくら寿司に押されています。
しかし、寿司以外での人気が高くラーメンなどに力を入れているようですし、最近では丼ものも始めており、平日の売上強化に乗り出しています。
客層は子供連れのファミリー層が多いようで、業績改善の為、食べ放題や1皿50円など様々な仕掛けを施しているので、一定の成果は上がっています。
創業は1973年で、2017年の売上高は800億円前後。
寿司業界の市場
寿司業界の市場は4000億円~5000億円前後で推移しています。
ですので、上記の大手チェーン店が占める割合は非常に大きいです。
各社の競争は年々激化しており、安くて鮮度の良い事は当たり前になりつつあるので、差別化を図る為、各社ともにサイドメニューの充実に力を入れています。
お寿司では、多様化を図ることが無づかしい事から、サイドメニュでの競争が見られる傾向にあります。
高原価のビジネスモデル
100円の回転ずしが多くなっているので、忘れてしまいがちですが、寿司というものは本来であれば高級料理です。
ですから、100円ずしは非常に原価率が高くなってしまうのです。
一般的な外食は原価率が30%だと言われているのに対し、回転ずしの場合は50%が原価率。
つまり、「低価格・高原価」のビジネスモデルです。
一般的に50%といえば、外食産業は成り立ちません。
何故かというと、販管費というものが60%を占めることが多いからです。
販管費とは、人件費や家賃などを含めた諸々の経費。
どのように100円回転ずしチェーンが成り立っているのかというと。
IT管理でロス削減
外食産業のロス(廃棄)は10%~15%と言われています。
100円ずしは徹底的なIT管理でロスを4%まで削減に成功しています。
曜日・時間帯・地域によってデータを集め、生産体制を整えることが可能。
人件費に関しても、アルバイトを多く抱える100円ずしチェーンは、ITによって人件費の管理まで行い、徹底的なコスト削減を可能にしています。
収益商品と集客商品
100円ずしは、サイドメニューも充実しています。
お寿司に関しては、そこまで大きな利益が望めない事が原価で分かると思います。
しかし、サイドメニューはどうでしょうか?サイドメニューは100円ではありません。
このサイドメニューが、100円ずしチェーンの儲かりどころとなります。
つまり…
- お寿司=集客商品
- サイドメニュー=収益商品
という事になるのです。
居酒屋で、ビール1杯180円という看板をよく見ませんか?
実はビールは原価150円程なので、儲けがありませんが、それを客寄せとして違うメニューも頼んでもらい収益をあげているのです。
それと、似たような集客・収益方法だといえます。
サイドメニューの売上は、現在2割程度だという事ですが、サイドメニューで他社との差別化を図り、収益を伸ばそうと競争している段階です。
また、100円でない高単価のお寿司でも収益確保を狙っているチェーン店もあります。
しかしながら、中には採算が合わなくて消滅した商品も中にはありますので、お寿司だけでは厳しい事も窺えます。
まとめと要点
回転ずしチェーンの、とりわけ大手4社は100円ずしチェーンであり競争は年々激化しています。
裾野は全国各地に広がり、既に数年たっていますので顧客の絶対数は今後変らないのかもしれません。
ですので、既存顧客を守りつつ新規顧客を獲得するという傾向にあるため、ブランディング戦略が展開されていく業界です。
そうした中でも、「低価格・高原価」のビジネスモデルは各社譲れないところでもありますので、重要なポイントをいかにまとめると…
- 予測ビジネスである事から、高度な情報分析で廃棄率を下げる
- 最繁時と閑散時間の人件費を管理する
- 仕入れと物流の価格を極限に抑える
- 客単価や回転率を上げる戦略やサービス
- 他社にない強みを作る(サイドメニューの多様化)
- 利益還元でリピーターを作る
というように上部の2つは、販管費率を抑えるために「低価格・高原価」ビジネスモデルで必須の要素であり、ITの活用の必要とされます。
3番目は、純粋に良い品の原価率を低く抑えればその分、利益に還元されます。
下部の3つに関しては、他社に顧客が流れない、または新規の顧客獲得のための戦略でもあります。「低価格・高原価」のビジネスモデルは「高回転・低価格」のビジネスモデルでもあります。高回転でなければ、売上げが立たずに利益も上がりません。
利益がないと、新たなサービスを打ち出す事が出来ずらい環境となります。常に進化する回転ずし業界で遅れをとる要因にもなりかねませんので、悪循環になってしまいます。
つまり、顧客満足度が重視されるようになっているともいえるでしょう。
大手4社4様の方針・戦略・強味があると言っても過言ではないので、非常に競争の激しい業界です。
ですが、4社ともに100円を折れずに提供しているのですから、尊さすら覚えます。