2018年6月から「住宅宿泊事業法」(民泊法)が施行されることになりました。
あまり、大きな話題となっておりませんが不動産業経験者の私にとってはかなり興味深いニュースです。
「住宅宿泊事業法」は2017年6月9日の国会で可決・成立し2018年6月の施行となる事が閣議決定されています。
一昔前に、問題点の温床となっていたのに知らぬ間にといった感じです。
最近、農家宅に宿泊し農業体験できるサービスがメディアで取り上げられていましたが、民泊法に関連づいて加速しているのだと感じられます。
目次
民泊とは
民泊とは、簡単に言えばマンションなどの住宅に不特定多数の客を宿泊させることです。
これまでも2014年から国家戦略特区で特区民泊があったり、2016年に旅館業法の規制緩和などがあり民泊についても営業が簡易化に向かっていたのは確かです。
これもすべて2020年のオリンピックに向けたホテル不足の解消に向けた動きであると言えます。
今回の民泊法は、特区民泊にかわり全国どこの地域でも民泊事業が可能になるという事です。
営利目的や、投資目的の対象となる事となり事業者が多く出てくると思われます。
民泊の問題点
問題点と言えば、何よりセキュリティ面の問題です。
マンションの一室が民泊貸しだされている場合は、その部屋に見知らぬ人が出入りを繰り返すわけです。特にオートロックマンションの場合は、オートロックのセキュリティの意味を成さなくなってしまいかねません。
更には、宿泊者の騒音などによる近隣トラブルもあるでしょう。
マンションで何気なく暮らしていても、同マンションの1室が住民や地域住民の確認もないままに、マンションオーナーの独断で民泊への転貸の承諾がされる事だってあり得ます。
諸手続きを済ませ合法的に民泊をしている場合もあれば、無許可の違法民泊やヤミ民泊などもこれまで多く存在していました。
今回の民泊法により特区民泊の線引きが無くなることで逆に、新たな違法民泊やヤミ民泊が増えるかもしれません。
世界的にホームシェアリング(民泊)の流れは進んできています。日本でも旅館業法に代わりようやく民泊法が整備されましたが少し敷居が高い印象。
細かなルールやサービス等を海外の事例なども参考に進めていく必要があります。
宿泊施設不足解消・空き家の活用
民泊が認められた背景には、東京オリンピックによるインバウンド需要に対応しようという流れが読み取れますが、そもそも日本ではホテル不足という事があげられます。
外資系ホテルがここ数年でオープンが相次いでいますが、日本のホテル業界は実に80%以上の稼働率ですので現状ホテルが足りていません。
平日であれば問題はありませんが、土日祝前日のホテルの稼働率はほぼ100%ではないでしょうか。
機会損失が顕著な業界だと言えます。
そこで、民泊という活路が生まれました。もともと足りていなかった宿泊施設の解消を目的とし、賃貸マンションは少し前であれば、全国の60%は空室と言われましたのでこれらの思惑がマッチしたのです。
これは大きな無駄を省き、大きな利益をもたらす非常に合理的なビジネスでもあります。
民泊法によるジレンマ
今回の民泊法により事業者は登録届け出が必要になる事で、これまでの数万件以上の営業していた民泊事業者のうち届け出が1000件前後だと言います。
この登録制度の導入を機に民泊をやめるという声が多く上がっているようです。
民泊法は従来より営業していた事業者からは、許可を得る代わりに厳しい規制と多くの手続きが必要となる為に、継続を諦めるという選択になる人が多いのです。
そもそも、民泊には大きく2種類の形態があります。
家主同居型と家主不在型です。
内容は言葉の通りですが、登録手続きや規制はそれぞれに違います。
同居型の場合は長時間不在にならない事が条件であり、不在型は管理業務の委託や設備投資の初期コストが必要となる等、営業をするうえでハードルは低くありません。
また、住む地域によっても営業が出来るか否かが決まります。
居住区の縛りも、民泊法には含まれており住居専用地域は週末のみの営業に限られます。
また、分譲マンションや自治体で民泊を禁止されてしまうと営業は出来ません。
特に、分譲マンションや自治体の規制は国の規制とで2重の基準をクリアしなければならない。
そうした、厳しい規制を強いられる事から民泊が解禁になると同時に事業者が増えるどころか、事業を手放す人が多くなるのだと言います。
需要は高まるにも関わらず、営業継続可能な民泊は一気に減るという見通しです。
ヤミ民泊や違法民泊の多くは残ると思われるので、真摯に営業していた人ほどやめてしまう流れになってしまいそうです。
民泊事業者が減るというチャンス
民泊事業者が減るという事は、機会損失が更に大きくなるという事。
つまり、その機会を一極的に集めることが出来れば大きなビジネスになるという事です。
もちろん、それでもコスパは良くはありませんが求められている事業をすることは安定した稼働率を保てます。
もはや、早く利益を継続的に出せるスキームを作ることのできた事業者が持っていきそうな匂いしかしません。
日本は、ホテル・宿不足です。世界的に見ても遅れています。
民泊はホテル・宿不足を解消するだけでなく、空き家を有効活用できます。
民泊の利点はビジネス面だけでなく、異文化交流のコミュニティとしても期待できます。様々な人の交差で新たな価値も生まれるかもしれません。
前回の記事でも書きましたが、この民泊という業態は不動産管理会社が強いと思われます。特にマンスリーを管理している業者は乗り出しそうな気がします。
実際の状況は
6月15日の施行日を経過しました。
民泊法により、全国で約5万件以上ある民泊のうち申請数はわずか約3000件のようです。
つまり、表向きでは殆どが廃業するという流れになっているようです。
Airbnb(エアビーアンドビー)が大打撃
今回の民泊法で最も影響を受けているのが、民泊仲介の最大手Airbnbです。
Airbnbは民泊法により未申請の物件をサイトから非掲載にすることで、物件数の半分以上が消えました。物件数にするとおよそ4万件以上。
民泊仲介として、世界の民泊市場を引っ張るAirbnbとしても、部屋の供給量が減ることはビジネスの縮小を意味します。
日本だけに規制があるだけではなく、先進国ではこういった民泊規制は少なからずあります。
しかし、今回の民泊法で無法地帯であった民泊市場にルールが整備されましたので、新たな枠組みの中でのゲストやホストへのサポート・サービスがしやすくなったという事も言えると思います。
民泊法がこれまで叩かれている事には、日本の民泊旅行者の経済効果は5000億円もあり、これを損ないかねない現状とホストへのフォローが無いために不満があふれ出ているのだと感じます。
もう2~3ヵ月もすれば、落ち着く話だと思いますが。
考えてみれば、民泊の解禁(規制?)にはオリンピックという背景があります。
2年後までに民泊物件の確保を含め整備を進める必要があります。国としてもオリンピックで最大限まで国益を出したいと考えているはずです。
このまま、本当に民泊の物件数が需要に全く追いつかないのであれば何か妥協案のような裏ルールも出てくるかもしれません。
気になる一般人でも介入できるビジネス面では
気になるのは、民泊と世間では騒がれていますが一般の私たちにもチャンスがあるのか否か。
もちろんあります。
基本的には、物件収入と同じような流れとなりますが物件を購入しなくても転貸という方法があります。
もちろん、転貸可能物件に限られますが。
物件を家主から借りて、その別件を民泊として運用するという事です。
これは、私が不動産業で営業していた頃に新規事業として立ち上げようとしていた不動産業と民泊の最もポピュラーな例ではないでしょうか。
もちろん、物件購入をしてしまえば民泊収入をそのまま利益と出来ますので効率的ですが、原資が必要になります。
マンション経営と同じように、経営すると言う気概が無いと失敗する可能性もありますが、今後は新たな投資のオプションとして加わってくると考えられす。
これが、人気になればマンションオーナーはウハウハですね。
まとめ
私が不動産業をしていた頃は民泊というものが、まだまだ周知されておらず。しかしながら、海外の旅行者等の利用客は多くありました。
そして、ルール作りがまだできていなかった為に問題も多く続出しているさなかでした。
当時の私は民泊に大きなビジネスチャンスを感じており、新事業としてアプリ開発や民泊できるマンション管理事業に乗り出そうとしていた事を思い出しました。
結局は、事業計画もまとまらないままに退職してしまった訳ですが…
今、現役で不動産業を営まれている方がこのビジネスチャンスをどのように昇華させるか、どこの企業が民泊業で台頭してくるかが見ものです。
やはり、マンションの管理会社が強い分野かとは思いますが。